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採択スタートアップ4社が見た、JR東日本スタートアップの実現力。

採択スタートアップ4社が見た、JR東日本スタートアップの実現力。

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2017年度、そして2018年度とこれまでに2回開催された「JR東日本スタートアッププログラム」は、毎回20社近くのスタートアップの事業アイデアが採択されている。そして、JR東日本グループが有している豊富なアセット・リソースを活用した実証実験が行われ、実用化まで進んだサービスも少なくない。なぜ、同プログラムではスタートアップの事業アイデアが実用化されやすいのか?

――そこで今回、2017年度「JR東日本スタートアッププログラム」で採択され、サービス実用化フェーズまで進んだ4社に集結してもらい、応募した理由やプログラムの特徴といった4つの設問に対して、パネル形式で回答。当事者だからこそ知る「プログラムのリアル」に語ってもらった。

登場いただいたのは、ecbo株式会社、株式会社VACAN(バカン)、株式会社バックテック、WAmazing株式会社の4社で、各社とJR東日本による共創事例は以下の通りだ。

【ecbo × JR東日本スタートアップ】

大きな荷物でお困りの国内外の旅行者向けに、事前予約の荷物預かりサービス「ecbo cloak」を提供するecbo。同社は、2017年11月よりJR東日本東京駅の手荷物預かり所にて事前に⼿荷物の預け⼊れ予約をすることができるecbo cloakを導⼊。2018年12月には、東京駅に次いで⼿荷物預かりの需要が⾼い品川駅および池袋駅にサービスを拡⼤し、⼿ぶら観光のさらなる推進を図っている。

【VACAN × JR東日本スタートアップ】

AIとIoTを活用して空き情報提供サービスを行うVACAN。カメラシステムを店内に設置し、AIで解析したデータをデジタルサイネージに空き情報としてリアルタイムに表示するサービスの実証実験を、JR東日本スタートアップ支援のもとに手がけている。2018年5月には、東京駅改札内1階 ベーカリーカフェ 「デイジイ東京」グランスタ店にてカフェスペースの空席が一目でわかる案内サービスの提供を開始し更に連携を進めている。

【バックテック × JR東日本スタートアップ】

京都大学大学院医学研究科発のスタートアップ、バックテック。同社が運営するオンライン腰痛ソリューションサービス「ポケットセラピスト®」とジェイアール東日本スポーツのノウハウを組み合わせ、フィットネスクラブ「ジェクサー」で各々の腰痛タイプに合った対策トレーニングプログラムを提供。さらに、JR東日本グループのフィットネス施設と連携した腰痛対策プログラム「こしケアプログラム」を構築するとともに、健康を軸とした連携をさらに進めている。

【WAmazing × JR東日本スタートアップ】 

WAmazingは、インバウンド観光客向けに訪日前から、ホテルやアクティビティ等の国内サービスが予約できるプラットフォームを提供。2017年〜2018年の冬にかけて台湾・香港の方々に GALA 湯沢の情報紹介からチケット購入までをワンストップで提供し、冬季のスノーエリアへの誘客を促進した。さらに2019年には成田空港で訪日外国人旅行者の利便性向上を目的とした実証実験をスタート。JR東日本が販売する訪日外国人旅行者向けフリーパス「JR TOKYO Wide Pass」をWAmazingとWeChatミニプログラム「小票夹」のアプリで購入することを可能にし、予約、決済、受け取りをよりスムーズにしている。

【Q1】 なぜ「JR 東日本スタートアッププログラム」を選んだのか?

「圧倒的な事業シナジー」(ecbo・猪瀬氏)

私たちは大きな荷物の預け場所に困った方に、店舗や施設の空きスペースを提供する荷物預かりサービスを提供しています。もともと、このサービスの着想につながったのがJR東日本の駅構内で見た上記のような“困りごと”でした。このことからも、交通インフラであるJR東日本さんとは圧倒的なシナジーがあることを確信しており、絶対に連携したいと思っていたんです。そこで、プログラムに応募しました。

▲ecbo株式会社 Business Development 執行役員 猪瀬雅寛氏

大学卒業後、大手通信キャリアに入社し、大口顧客向けにモバイルをメインとした業務効率改善提案の営業活動を行う。その後、2017年にecboにジョインし、加盟店開拓営業組織の立ち上げを経て、現在は主に大手企業とのアライアンスを軸にBizdevを担当。

「中心となる」(VACAN・篠原氏)

JR東日本さんの駅は、交通アクセスが集中する都市の“中心となる”場所を網羅しています。つまり、人々の生活に密着したところに駅がある。そうした主要な場所で、私たちの空き情報サービスの価値を発揮したいと考え、プログラムへの応募を考えました。

株式会社VACAN 取締役 Chief Design Officer 篠原清志氏

SonyPCLのデザイナーとして、企業ブランディングに従事。カナダでフリーランスのデザイナーとして渡り歩き、ファッションショーのモデルとしても活躍。帰国後は大手IT企業でDesign Thinkingを活用し、プロデューサー、マネージャー及びディレクターとして、サービスをリード。その後、VACANにジョインする。

「アセット」(バックテック・福谷氏)

バックテックは肩こりや腰痛などカラダの痛みを解決する事業を展開しています。事業拡大のためには、人々の生活に密着したアセットやタッチポイントが必要となります。JR東日本さんには鉄道はもちろん、商業施設やビルのテナント、自販機に至るまで、私たちの求めているアセットやタッチポイントが非常に多い。それがプログラム応募を決めた一つ目の理由です。もう一つの理由は、JR東日本さんの「生活サービス事業成長ビジョン(NEXT10)」の中に“くらしづくり”というキーワードが入っていたこと。長距離出張や満員電車で腰が痛いといった日々の暮らしにおける課題を一緒に解決できると考えました。

株式会社バックテック CEO 福谷直人氏

愛知県の老人介護保健施設にて、高齢者のリハビリテーションを日々行い、夜間や休日に大学院に通学。修士号取得後、京都大学大学院医学研究科の博士後期課程へ進学し、膝や腰の痛みに関する研究を手がける。その後、京都大学発のスタートアップとして、バックテックを京都にて創業する。

「インバウンド×鉄道・ホテル・リゾート・小売 シナジー効果高」(WAmaizing・加藤氏)

WAmazingは、近年急増している訪日外国人向けのプラットフォームサービスを提供しています。JR東日本さんには、鉄道事業のほかに、GALA湯沢といったリゾート事業やホテル事業、レンタカー事業なども手がけられていますし、ルミネ・アトレ・エキュートといった商業施設もある。訪日外国人の“移動”はもちろん、“遊ぶ”や“食べる”、“買う”など、幅広くシナジー効果が見込めることがプログラム応募の理由です。

また、グローバルな観点から見て、鉄道国家である日本はとてもユニーク。例えば中国では、交通インフラは国営事業なので、鉄道会社との連携は外国から見ても非常に信頼度も高い。このような点も、応募した理由の一つになっています。

▲WAmazing株式会社 代表取締役/CEO 加藤史子氏

1998年、リクルート入社。主にネットの新規事業開発を担当した後、観光による地域活性を行う「じゃらんリサーチセンター」に異動。国・県の観光関連有識者委員や、執筆・講演・研究活動を行ってきたが、「もう1度、本気のスケーラブルな事業で、日本の地域と観光産業に貢献する!」を目的に2016年、WAmazingを創業する。

【Q2】 プログラムを進める中で感じた最大の特徴は?

「スピード感」(ecbo・猪瀬氏)

大手企業と協業するにあたって、「キーマンが誰なのか分からない」ということが多々あり、それだけで時間をロスしてしまいます。しかし、このプログラムでは、そうした悩みは一切ありませんでした。キーマンをちゃんとアサインしてくれたので、意思決定も迅速。むしろ、JR東日本さんから急かされることもありましたね(笑)。それくらい腰を据えて協力してくれましたし、プログラムが終わったあとも併走してくれる。大きな信頼関係のもとに、JR東日本さんと連携することができています。

「早」(VACAN・篠原氏)

私たちのサービスを実践してくれる「場」を用意してくれるスピードは非常に速かったですね。JR東日本スタートアップの担当者さんは、こちらからの要望を投げるとすぐに応えてくれますし、駅や施設の責任者に直接繋いでくれ、mtgのサポートまでしてもらえる。そうすると決定も素早く、余計な時間をとられることなくサービス改善に時間を使うことができ、とても助かりました。私たちもスピードは自負していましたが、それを凌ぐような速さでしたね(笑)。

「コミット力」(バックテック・福谷氏)

私たちのサービスを深く理解した上で、JR東日本グループ内の最適な事業部の方々をアサインしてくれました。また、プログラム終了後も、長期的なゴールに向かってコミットし、支援してくれている点が最大の特徴だと実感しています。

「スピード感・柔軟性・本気度」(WAmaizing・加藤氏)

私は以前、大企業に勤めてその内側にいましたが、外部企業との連携は、外部からの提案者が、大企業社内の関連部署の決裁者にたどり着くまでがとても大変で、それは●●課、いや、▲▲部ではないか、などたらい回しにされることもよくありました…。しかし、JR東日本スタートアップさんは、大企業であるJR東日本グループの社内人脈がとても広い。協業する上で最適な方を、きっちりとアサインしてくれるんです。そうした柔軟性はもちろん、スピード感や本気度も非常にあると思います。

【Q3】 実証実験を通して、1番前進したことは?

「信頼」(ecbo・猪瀬氏)

JR東日本東京駅の4箇所で手荷物預かりサービスが実用化したことが、一番の前進になったと思います。現地では看板やポスターなどもご用意いただいたことでユーザーへの認知度も高まり、「待ちに待ったサービスだ」と好評を得ました。新聞・TVなど多くのメディア媒体でも取り上げられ、JR東日本の公式ツイッターでも告知してもらった際には、4000リツイートされるなど、非常に注目度の高い取り組みになりました。これは、私たちのプラットフォーム自体の信頼向上にも繋がっていて、営業力の向上や投資家からの資金調達にも良い影響が出ていると思います。

「 to C と ナマ」(VACAN・篠原氏)

プログラムを通じた実証実験や東京駅のカフェでのサービス実施により、お客さまのナマの声を聞ける場をいただけたことは大きな前進に繋がりました。これにより、空席情報の見せ方、お客さまのサービス体験について改めて検討、改善に取り組むことができました。

 

「コンテンツ開発」(バックテック・福谷氏)

肩こりや腰痛にはさまざまなバリエーションがあります。そこで、肩こりや腰痛のタイプに合った対策トレーニングプログラムのコンテンツを開発。それをジェイアール東日本スポーツさんが展開するジムでTO C向けに提供すると、想像以上に売上もあがりました。もともと、当社のサービスはTO B向けのみの展開だったのですが、TO C向けのビジネス展開ができたのも、JR東日本さんと連携できたからこそです。

また、TO B向けにも営業活動をしていますが、やはりJR東日本さんのブランド力は強く、商談の際にもキーマンにお会いできることが増えましたね。

「協業深度 〜集客は10倍〜」(WAmaizing・加藤氏)

昨シーズン、訪日外国人向けにGALA湯沢への誘客を促進したサービスを提供しました。特に、台湾・香港・中国といったアジアの観光客の方々にスノーアクティビティは大変好評で、確かな実績を作ることができました。こうした実績をもとに、ほかの観光事業者にも訪日外国人向けのスノーアクティビティを提案。すると、今シーズンは、昨シーズンに比べて10倍近くの集客に成功しています。日本全国のスノーリゾートはおよそ400施設。今シーズンはその中の270施設に当社のサービスを導入いただいています。

【Q4】 事業化に向け、今後取り組んでいきたいことは?

「世界一の荷物インフラへ」(ecbo・猪瀬氏)

世界的に見ても、日本の鉄道のサービス精度は極めて高いものです。荷物預かりという課題を解決し、JR東日本さんと鉄道インフラの価値を向上させ、その事例を世界に展開させていきたいと思っています。

「プラットフォーム 全国→世界」(VACAN・篠原氏)

レストラン、トイレ、駐車場、会議室などが満席で「行ってみたけどダメだった」という事をほとんどの人が経験したことがあるとおもいます。そうした「人に共通する悩み」を解決するプラットフォームを作り、それを当たり前にし「空きが分かる文化」を全国に、世界に広げていきます。

「売上爆増!!」(バックテック・福谷氏)

JR東日本さんは、巨大なインフラを持っていて、人々の暮らしを支えています。そこに私たちのヘルスケアサービスを掛け合わせて、人が暮らす中で“いつの間に健康になっている”ような状態を創出したいと思います。まずは日本の健康市場でしっかりと売上を生み、結果を出してブランド力を高めていきたいですね。

「インバウンド観光で地域活性!」(WAmaizing・加藤氏)

訪日外国人の観光エリアは、東京に一極集中しています。一方、JR東日本さんの営業エリアである東北6県に宿泊している訪日外国人は、全訪日外国人宿泊のうちのわずか1%程度です。しかし、東北には温泉、世界遺産、お祭りなど、魅力的なアクティビティがまだまだあります。私たちのサービスを通じて、地域活性化への貢献にも着手していきたいと思います。

取材後記

JR東日本グループのキーマンに繋がることができ、意思決定のスピードが極めて迅速。これが、「JR東日本スタートアッププログラム」の最大の特徴と言えるだろう。大企業とスタートアップのカルチャーギャップは、そのスピードやコミットの仕方の差異から生まれる。その差異を、JR東日本スタートアップの担当者がハブとなり、有機的に結びつけている。――言葉にするのは簡単だが、大企業でこれを迅速に行うのは、なかなか難しいはずだ。だが、それをなし得ているからこそ、「JR東日本スタートアッププログラム」からは次々とサービスが実用化されている。今後、新しいサービスがどのように生まれていくのか。引き続き、注目していきたい。

(構成・文:眞田幸剛、取材:松尾真由子、撮影:古林洋平)

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