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【連載/4コマ漫画コラム(9)】新しい組織の作り方① :『権限がない責任』は『責任逃れの言い訳』を作る


■やってはいけない新組織の作り方

「新しいことにチャレンジする」ためにも、ある段階になれば「組織」が必要です。「組織」ができれば、予算も人も正式について、プロジェクトが円滑に進むようになるはず……ですが、なかなかそうもいきません。当たり前ですが、「組織化」はあるステップのスタート地点でしかないからです。むしろ組織化してからが勝負。ただ、「組織を作る時」に「やってはいけないシリーズ」をついついやりがちです。その代表格について、今回はお話ししましょう。

大企業になればなるほど、役割分担がきっちりされ(すぎ)ていて、「組織を作る」時に「経営企画」や「人事」というスタッフたちが、先に「組織という箱」を準備しがちです。そして、リーダーを決め、ある日、リーダーに「これこれこういう組織を作る。アナタにリーダーをやってもらうことになったので、よろしく」と組織図を渡します。そこには、既に体制図も書かれていてメンバーの名前も決まっています。「経営企画」や「人事」にすれば、「組織化は私たちの仕事だからここまでの準備をするのは当然」と思っているのでしょうが、これはダメ。


武器がなければ責任は果たせない

まず、あなた(組織を作れる立場にあるとします)が、リーダー本人に本当にそのテーマやプロジェクトを本気でやる気があるかどうかをしっかりと話をして確認しましょう。本人のやる気が本物かどうかを見抜く眼力が必要です。

そして、ここからが特に大事なのですが、「責任」と合わせて「権限」を与えることです。「責任」の方は、あなたのそのプロジェクトに対する期待やマイルストーンなどを、リーダーとの会話を通じて、明確にして、設定します。そして、「その責任を果たすためにはどういう『武器』が必要か」をリーダーにしっかり考えてもらい、言ってもらうようにします。『戦うための武器』=『権限』です。

残念ながら、日本ではやたら「責任」ばかり明確にしがちです。その責任やゴール・マイルストーンを達成するためには、必ず「権限」が必要です。「予算はこのぐらい必要」「こういうメンバーが必要」などです。

上述のように、スタッフがリーダーには相談もせず、(良かれと思って)メンバーまで決めてしまうのでは、「こんなメンバー(数や質)で、こんな責任果たせるわけないよな。ま、お(かみ)からの命令だから仕方ないか。うまくいくはずはないけど、とりあえず指示には従ってリーダーになっておこう」というような思考回路にリーダーは陥り、お上(スタッフや経営陣)のせいにしてしまうようになります。これでは成功するはずがありません。

ただ、残念ながら、大企業の中ではそのリーダーに人事権の全権を与えるわけにはいきません。「(他の部門の)あの子が欲しい~」と「はないちもんめ」を歌っても、その希望を全て叶えさせる権限までを与えるわけにはいきません。なので、中途半端に「人事はリーダーであるお前に任せる」と響きだけはカッコいいことを言っても、リーダーは困るだけになってしまいます。


足りない権限はあなたが足掻く

なので、あなたは、組織を作る前にリーダーとしっかり話をし、あなたが動き回って、彼が必要と言っている人物をかき集めることをやらなければなりません。具体的には、希望しているメンバーの所属上司との交渉です。そして、まだ集めきれずに不完全でも「このメンバーで始めよう」となってから、組織を正式に作りましょう。

新組織では予算も大事ですが、メンバーがそれ以上に重要です。よく「兼務だらけ」の形だけの組織がありますが、それでは「いかに本気度が薄いか」を宣伝しているようなものです。

不完全な部分は、社外から中途入社の方を取ってきたり、社内公募をかけたりすることで補っていきます。その際にも、「ウチの会社の中途採用枠は」とか「社内公募を今の時期にはかけたことがない」など、色々な「前例・社内規定主義」の抵抗に間違いなく合います。それを乗り越えて何とかするのがあなたの役割です。権限をキレイに揃えられない分、あなたが足掻いてサポートするのです。リーダーに「責任」だけを投げてもダメ、また、「権限」がないのに「権限」があたかもあるように見せるだけ、というのもダメ、ということです。結構、大変ですよ。

シリコンバレーのベンチャーであれば、人事の部分はある意味単純です。「投資」というお金の権限が最初にリーダーにあって、リーダーはそのお金(と事業や自分の魅力)で、他社から人を引っ張ってくればいいのです。人事権とかを振り回す必要はありませんし、欲しいメンバーの上司と交渉することもありません。

私自身、何度か「新組織」でのリーダーを任命されました。ただ、一度として「自分でメンバーを選んで」から「組織ができた」ことがなく、苦労しました。その経験を活かして、自分がそれなりの立場になってからは、上記のような「リーダーが必要とするメンバーを最初の段階でできるだけ集め、足りない部分は自分があちこちに交渉しながら(ぶつかりながら)なんとかする」ということをやってきて、なんとか新組織を支えてきました。

社内公募を積極的にやった時には、異動希望を出したメンバーの所属部門長に呼び出されて「この人さらいめ!」と怒られたりしました。「こういう人にとっては部下は『自分のモノ』なんだろうな」と内心は軽蔑しながら、顔を神妙に保つのが特に難しかったです。

*今回は「人事権」を中心に「権限」の話をしました。「権限」で大事な「予算」をどうやって準備するか(その原資はどうやって獲得するか)のヒントは第8回をご覧ください。


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

瀬川秀樹先生連載/4コマ漫画コラム