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【インタビュー】「働き方改革」を推進するコニカミノルタジャパンが、さらなる進化に向けて取り組む共創とは?

少子高齢化に伴う生産人口の減少や、ワークライフバランスを追求する傾向などを受け、ここにきて急激に「働き方」への関心が高まっている。

 そんななか、複合機を始めとした情報機器の開発・販売などを行うコニカミノルタジャパンでは、「Work  Style  Design  Company」のビジョンのもと、ブームに先駆ける2013年から自社の「働き方変革」に取り組んでいる。そこで大きな成果を得た同社は、現在ではそのソリューションを多くの企業に惜しみなく提供する。実践例として公開している本社のショールームには、わずか2年半の間に約9万人もが訪れるまでになっている。

  その確かなソリューションと「働き方変革」への関心の高まりを追い風に、いま同社は、さらなる進化に向かって他社との協業も模索し始めている。同社の取り組みと今後の展望について、このプロジェクトを一貫してリードしてきたコニカミノルタジャパン株式会社取締役の鈴田透経営企画本部本部長に話を聞いた。

【プロフィール】取締役・経営企画本部本部長 鈴田透氏(上写真)

1981年、ミノルタカメラ株式会社(現コニカミノルタ株式会社)入社。国内カメラ営業企画、情報機器販売会社の経営企画業務に従事したのち、人材開発、人事企画を担当。2007年、コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社人事総務統括本部長、2012年マーケティング本部長を経て現職。「働き方変革」「多様性推進」のプロジェクトリーダーを務める。


まず自社実践で成果を得た

――現在は多くの企業の「働き方変革」をサポートしているコニカミノルタジャパンですが、そのベースには自社の取り組みがあると聞いています。まずは、貴社の「働き方変革」について教えてください。

鈴田:基本的なコンセプトは「時間と場所にしばられない働き方」です。それを実現する方法として、全国事業所の無線LAN統一化、本社ビルのフリーアドレス導入、情報機器部門の全社員への「スーパーフレックス」導入、同じくテレワークの運用などを行っています。

 本社のオフィスには、社員一人一人のデスクがありません。フロアの両端にコミュニケーションスペースがあり、中央には、誰でもどこにでも座れるソロワーク席やフリー席があります。実は、その席は全社員の7割分しか用意していません。外回りをする営業職、出張や休暇を取っている社員が日々いるため、7割分があれば十分でした。

 一人一人のデスクがないため、社員は余計な文書を積み置くこともできません。移転を契機に社内の文書を整理したところ、社内文書、書庫等の収納庫ともに60%を削減することができました。その削減した書類を積み上げた高さは、本社1000人分で実に東京スカイツリー(634メートル)を超えるほどのものでした。これだけの書類を削減できたのですから、オフィススペースを確保するという意味で効果は絶大です。当社の場合でいうと、共有スペースを相当増やしたにもかかわらず、全体のオフィス面積は以前の4分の3程度になっています。都市部の地価の高いエリアでは、このコストダウン効果は相当なものがあります。

 これらの取り組みの発展として2016年からの「保管文書ゼロ化活動」があります。


「どう働きたいか」から「働き方」をつくる

――なるほど。つまり、貴社の武器であるITを活用し、無駄のカット、省スペース化に成功した、と。

鈴田:いえ、そう単純なことではありません。結果だけを見れば確かにそう思われるかもしれませんが、私たちが目的にしているのは「生産性の向上」です。生産性を上げていくには、時間と場所にしばられない働き方が有効のはずです。ならばそれを実現するためにどうすればいいか。ITを活用することでそれができるのではないか――という順序です。まず理想があって、そのためにどうするかを考えていく。この取り組みを始めるに当たって当社は2013年に、若手・中堅社員を中心にした約50人の「働き方変革プロジェクト」チームを発足させています。そして、そこでまず徹底的に、「どんな働き方をしたいか」を現場主導で突き詰めていきました。オフィスのデザインを始めたのは、その結論が出てからです。

 「働き方変革」でよくある失敗が、残業代削減などを狙いに人事部や総務部が主導して、一時的な効果で終わってしまうというものです。人事部や総務部主導では、会社側の都合が優先されがちで、社員の共感が得られにくい傾向があります。「そもそも何のためにやっているの?」という根本の認識がすれ違ってしまうのです。

 現代の社会状況からすると、核家族化を背景に、子育てや介護などで現役世代の負担が大きくなっています。生産能力の高い彼らがその能力を存分に発揮するには、なるべく時間や場所に制約されず、柔軟に働いていける環境が必要です。それを作り上げられれば、従業員にとっても会社にとってもメリットがあります。そういう共感があってこそ、「働き方変革」が社に定着していくのだと思います。

――ちなみに、貴社の場合、そのプロジェクトチームの発案で何か実現したものがあるのでしょうか。

鈴田:たくさんありますが、一目で分かりやすいという意味では、ショールームの壁の年表があります。当社では「働き方変革」の実践例として本社オフィスを公開しており、ご依頼に応じて、随時「Liveオフィスショールームツアー」というものを実施しています。レイアウト例としてのショールームだけでなく、実際に働いているフロアも業務中にご見学いただくというものです。これまでに1400社4000人近くの方にご参加いただいています。

 この「ツアー」のルートで、商談スペースの前をお通りいただくのですが、その側面の白い壁が約15メートル続くということもあり、チームメンバーの発案で、そこを利用して当社の沿革を写真入りで紹介しています。これはなかなか柔軟なグッドアイデアで、期せずして私たちは、来訪者に当社の遺伝子といいますか、新しい分野に果敢にチャレンジしてきたスピリットをお伝えできています。こうしたディスプレイができたのは、社内のデザインにまで社員が参画できた成果だと思います。


大手からスタートアップ企業までサポート

――ところで、貴社ではその取り組みを自社だけの成果に留めず、他者にソリューションとして提供しています。すでに実績も多数と聞いています。

鈴田:ワークフローの改革まで含めれば、佐賀県様をはじめ、おかげさまで多くの企業・団体様からご指名をいただいております。当社ホームページでも、東芝ITサービス株式会社様、アサヒ飲料株式会社様、大成化工株式会社様など数々の実例をご紹介させていただいております。大手企業様、スタートアップの会社様、社会福祉法人様、法律事務所様など、お取り引き先の業態はさまざまです。

――そこで提供していくソリューションの貴社ならではの特徴というのは何なのでしょうか。昨今は、ゼロからのオフィス作りなどを請け負う会社はたくさんあると思いますが。

鈴田:繰り返しになりますが、やはり、当社ではコンセプトを重視しています。パッケージとしてデスク・PC・ITインフラなどをご用意するのはさほど難しくないことです。機器を用意し、セッティングを行い、「働く場」を作って差し上げて、「はい、どうぞ」とお渡しする。――しかし、それは本当に働きやすい環境なのでしょうか。

 当社は、オフィス機器を提供していく中で得た顧客の課題や、私たち自身が「どう働きたいか」を考え抜いてオフィスを作ってきた経験から、まず働き方を決めて、その後に場を作る、という基本理念を持っています。場を作ってしまったら、働き方を変えるのは容易ではありません。「場」が働き方を制約してしまうからです。経理などデスクで黙々とする仕事もあれば、一日中外を飛び回る営業のような仕事もあります。働き方は一律ではありません。そこをきちんと想定して理想の働き方をイメージし、それに合わせて働きやすい環境を作っていくことが大事です。その一つの象徴的な取り組みが、当社でも実践している「保管文書ゼロ化」です。


「保管文書ゼロ化」が柔軟な働き方の第一歩

――まさか、紙の書類をゼロにすると?

鈴田:目標はその通りです。現実には法的に紙で保管せざるを得ないものもあり、完全なゼロは不可能なのですが、それでも当社では、最終ゴールを95%削減とし、全国約140カ所の事業所も含めて全社で取り組んでいます。決して夢物語ではなく、すでに当社では紙文書量を86%削減できています。ちなみに、もとの書類の量は、全事業所分を積み重ねると富士山を超える高さになるほどの量がありました。

――それを86%削減できたというのはすごいです。しかし、なぜそれが、「働き方変革」にかかわるのでしょう?

鈴田:「保管文書ゼロ化」の最大のメリットは、無駄のカットではありません。本質的な狙いは、「紙にしばられない働き方を実現する」ということです。冒頭で申した通り、当社は「時間と場所にしばられない働き方」を重視しています。では、それを実現していくときに制約になるものはなにか。実はその一つが、紙なのです。

 当社は複合機を主力商品で扱っている会社ですから、決して紙やプリントを否定するものではありません。紙には多くの情報量を盛り込める長所がありますし、正式書類としても信頼できます。その有用性は疑いないものです。ただ、一方には、電子文書にかなわない面もある。検索性や共有のしやすさなどです。

 これが何を意味しているかというと、例えば従来であれば、出先で手元に書類がないと、「すみません、一旦社に戻ってFAXします」などとなっていました。また、判子文化といいますか、社内で稟議を取るときなどは、実物の紙が手渡しされるという実情がありました。しかしこれでは、せっかくテレワークを導入しても、「会社に行かないと仕事が進まない」ということになってしまいます。ですから、完成したものや共有すべき文書は、電子化して保管したほうがいいのです。

 紙の有用性を大事にしつつ、書類は電子化によって検索や利用をしやすくしていく。つまり、「保管文書ゼロ化」はペーパーレスを目指すのではなく、紙と電子文書のそれぞれの特性を生かしてより働きやすい環境を作る、というところにあるのです。

 文書の電子化を進めていくときに重要なのは、何を電子化し、何を紙のまま保管するか。また、利用しやすいように電子文書をどう整理していくか、というところにあります。これには経験がものをいいます。ほとんどの会社にとって「保管文書ゼロ化」は初めての取り組みですから、どうしても試行錯誤になります。それに対して、自社の取り組みはもちろん、多くの企業をサポートしてきた当社の経験が役立てると考えています。

――お話を伺っていると、すでに「商品」としてソリューションが完成しているように思えます。協業したいという会社が現れたとして、オープンイノベーションに何を期待されるのでしょうか。

鈴田:確かに、オフィスづくりについては、機材・IT機器・インフラ等をすべて当社でご用意できます。デザインも行っています。

 幸いにして、いまニーズの高まりがあるので、ここから先は、このソリューションをもっと多角的に展開していければと望んでいます。例えば「場」を保有する不動産会社様と組んで、我々のソリューションと共に移転や起業をお考えの企業に提供していくということが考えられます。また、リニューアルを検討されている企業に向けて、VR(バーチャルリアリティ)を活用した訴求なども有効ではないかとイメージしています。そのほか、当社では想像つかない、はっとするようなアイデアをお持ちの企業様もいらっしゃるかもしれません。

 いま社会的関心の高まっている「働き方変革」に新たな市場を創造したいと考えている企業様、また、当社のように「まずは自分たちが実践してみたい」という企業・団体様に、ぜひ気軽にお声掛けいただければと思っています。