ここ数年、新規事業に挑戦する企業が増えてきた。しかし、新規事業が成功する確率は決して高くはない。苦戦の声が多く上がる要因の一つに、新規事業を担当するビジネスパーソンの多くが新規事業初心者であることが挙げられる。どのように意思決定をし、どう取り組んでいくか、最初の一歩がきちんと踏み出せないのだ。――このような課題を解決すべく、最先端のAIと自然言語処理技術で新規事業創出におけるマーケット分析の効率化やアイデア創出を支援する「Anews」(エーニュース)・「Astrategy」(エーストラテジー)といったサービスを展開しているのが、ストックマーク株式会社だ。

同社は東京大学大学院情報理工学研究科におけるAI・自然言語処理の研究をベースに、2016年4月にスタートした東大発のスタートアップだ。今回は、ストックマーク代表の林氏に、「Anews」・「Astrategy」を活用した新規事業立ち上げのノウハウについて話を伺った。

◆ストックマークのイノベーション支援の詳細「Anews」についてはコチラをご覧ください。

■ストックマーク株式会社 代表取締役CEO 林 達(はやし たつ)

2011年東京大学文学部宗教学科卒業。在学中の3〜4年時に創設した東京大学・北京大学・ソウル大学の学生交流ネットワークにて300名規模のフォーラムを主催。 4〜5年時には東アジアの富裕層向けのインバウンドサービス提供のベンチャーをスタートさせる。大学卒業後、2015年まで伊藤忠商事に勤務。統合リスクマネジメント部にて全社経営戦略策定業務後、食料カンパニーにおいて投資先の経営管理・新規M&A推進業務に従事。2016年4月ストックマーク株式会社を創設。


「自然言語処理×AI」で情報収集の効率化と組織力を高める

――現在の展開プロダクトである「Anews」の特徴についてお聞かせください。

林氏 : 「Anews」は新規事業アイデア発想のためのサービスです。2つ特徴があって、1つ目が「情報収集の効率化」。新規事業に関連する情報は膨大で幅広い視野を持ちながら自分に必要な情報を探すにはすごく手間がかかります。そこで「Anews」を導入すれば、AIがあなたのビジネスのミッションの抽象概念や興味関心を理解し、世界中から新規事業アイデアにつながる情報をニュースをパーソナライズして届けてくれます。さらに、ニュースの要約や関連ニュース、重要キーワードの収集もしてくれることで、アイデア発想がさらに広がります。

そして2つ目の特徴が「組織をイノベーションを生み出すカルチャーに変えていくためのツール」。各メンバーがニュースの意味を解釈し、ニュースをハブにしながらチーム内でコミュニケーションを取っていきます。それにより、このニュースに対して「自社の新規事業ならどんなアイデアを出せるか、自社のビジネスの方向性はどうすべきか」等チームの暗黙知を作り、組織の新しいビジネスの方向性を形成しつつ常に新しいアイデアを考えるカルチャーを醸成していく機能があります。

――「Anews」は個人だけではなくチームで使うサービスであると。具体的にどのような機能があるのでしょうか。

林氏 : 各メンバーがセンサーとなり、チームにとって必要な情報をチームのアクションボードに投稿していくイメージです。新規事業アイデア創出のきっかけとなるような、チームにとって読むべき記事は何かを全メンバーが主体的に集めていきます。それに対して、社内の知見者やマネージャーに対して、AIがニュースをマッチングし、コメントを求めるリクエストが飛んでいきます。朝会や週報でやっていることをデジタル上で再現しているイメージですね。このやり取りをメンバーが見て吸収することで、チームがひとつの方向性に向かって進んでいくことができるようになります。

――「Anews」に期待できる効果にはどのようなものがあるのでしょうか。

林氏 : 新規事業アイデア創出に関わる情報収集の効率化、そしてアイデアの創出サポートです。さらに重要なポイントはAIの理解をメンバーに促せるところですね。AIに取り組もうという時に、いきなり高度なシステムを入れても使いこなせません。まずニュースという身近なものからAIのアルゴリズムに慣れていく。――グーグルの検索に慣れていく感じですよね。「Anews」にどう学習させれば必要なニュースが出てくるのか、フィードバックが日々感じられることで自然とAIでできることに対して実感が湧いてきます。

――「Anews」を導入している企業はどんな使われ方をしていますか?

林氏 : 現状約1,000社に登録していただいており、その多くは新規事業企画系の部署になります。例えば帝人さんはヘルスケア事業への入り口として、情報収集を新規事業アイデアに繋げる使い方をしてもらっています。あとは、セブン銀行さん。銀行事業にも新規参入され、新しいことにどんどんトライしていくセブン銀行さんですが、その新しいアイデアを「Anews」から取得し、チーム内でどう事業に活かしていくかの議論をしています。


新しいカルチャーをつくるコミュニケーションツールでもある

――新規事業を進めていくにあたって必要な情報を「Anews」から取得して、アイデアを広げていくことができるんですね。

林氏 : そうです。新規事業部って社内で孤立しがちです。必要意義は理解していても「既存事業で儲かっているのに、なんであんな仕事をしているんだ」と心の中では揶揄され、社内から理解が得られないこともある。ですので、新規事業担当者はまず社内で新しいことに1番詳しい、頼られる存在になるべきだと思うんです。そして、「うちの事業部でこういうことできないかな、新規事業部のあの人だったらアイデアを持っているかもしれない」というように、アドバイスを求められる存在にならないといけない。その意味では、「Anews」は新規事業部にとって必須のツールですし、新規事業を考える全員が利用すべきサービスであると信じています。

さらに「Anews」では、新規事業部で情報を吸収するだけではなく、それを社内の他部署に発信することもできます。実際にWOWOWさんも「Anews」を全社で導入し、部署横断でのコミュニケーション等社内での風土改革に役立てています。新規事業部が新しいことをしっかり吸収して、会社のカルチャーを作っていくために日々の発信で社員のマインドを変えていく。「Anews」でそのサポートができたらと思っています。

――「Anews」を使ったコミュニケーションで、会社のカルチャーが変わったような事例はありますか?

林氏 : アンバサダー制度という形で社内にインフルエンサーを設定し、組織的に取り組んでいる事例があります。情報発信を人事考課まで落とし込んでいます。社内の知見者や若手が「こういうことをやるべきだ」と声をあげていくことで、新しいアイデアが生まれてくる状態になっていく。成功している企業さんは発信者がちゃんといることが特徴です。AIで情報を受信するのは簡単ですが、そこからどう考えるか、そして組織、人をどう動かしていくか、というのは人間でしかできないので。


AIで意思決定をアップデートする「Astrategy」

――「Anews」の次の展開である「Astrategy」のプロダクトについて教えてください。

林氏 : 「Anews」は国内外3万メディアからニュースを収集する、国内でも最大規模のニュースデータベースとなっており、そのデータから自社の攻めるべきマーケットや競合の情報をいち早くアラートしてくれるサービスが、「Astrategy」です。新規事業を担当する方は、自社のマーケット環境やテクノロジー動向を日々追いかけているとは思いますが、もはや世の中に溢れている情報量は人間が処理可能なレベルを遥かに超えています。さらにビジネスのスピードが速いVUCA時代において、レポートを読んだりネットで調べたりという受け身の分析では、最新の情報に追いついていけません。そこで「Astrategy」を導入すれば、自社のマーケットに関連する情報を網羅的に捕捉し、どういう傾向があるのか、どこを攻めるべきなのか、どんな競合がどんな動きをしているのかなどをAIが自動的に導いてくれる。競合より一歩先んじた高度な意思決定を支援します。

――「Astrategy」の特徴や活用方法はどのようなものになるのでしょうか。

林氏 : 特徴は2つあります。まずは人間では扱えない膨大なデータ量をすべてAIが客観的に分析してくれる点です。人間だとどうしても見落としがありますが、AIではありえません。膨大なデータを戦略コンサルのフレームワークで分析することで、誰でも同じクオリティで客観的に意思決定ができるようになります。次はスピードです。――例えば、新規事業担当者が社長や役員に「AIって今どうなっているの?」と聞かれてレポートを読みこんでも、そのレポートは半年前のデータなんです。その3ヶ月の間に新しい動きがあったら、社長や役員から怒られてしまいます(笑)。AIが毎日高度な分析レポートを作成してくれることで、意思決定のスピードが圧倒的に速くなります。

情報を集めるにしても、毎日大量のニュースをチェックするのは人力では無理がある。「Astrategy」は、国内外3万メディアくらいの膨大なニュースデータベースから情報を整理して、どんなトピックがあるのか、競合は出てきたのか、自社にとってリスクかどうかの意味付けまでAIがやってくれます。それをレポートの形式でアウトプットすることもできるので、社内への報告作業も簡単です。

――新規事業のリサーチには、まず「Astrategy」を使ってもらうと。

林氏 : そうですね。「Astrategy」は高度な戦略コンサルの思考を再現しているイメージなんです。何かを分析、調査をしようと思ったら、網羅的に情報を集めて整理して、そこに分析を加えて共有、報告していくのが一般的です。それを戦略コンサルのフレームワークに乗せて、誰でもお抱えのコンサルがいる状態にします。さらに、優秀なコンサルタントでも導き出せない客観的な特徴や未知の新規事業アイデア創出までサポートすることで、人間を超える意思決定の新しいプロセスを生み出したいと考えています。

――「Anews」と「Astrategy」はどう使い分けるイメージなのでしょうか。

林氏 : 新規事業の調査・分析をするときには「Astrategy」を使い、情報をコミュニケーションの中に組み込んで社内のメンバーに浸透させていくときには「Anews」というステップを考えています。一体のサービスなので、組み合わせて利用することで、効果が最大化されます。

――「Anews」と「Astrategy」で社会にどのような影響をもたらしたいと思いますか?

林氏 : ストックマークでは、テクノロジーを活用して、誰もが高度な意思決定を行い、企業の競争力を高めていきたいと考えています。AI時代においては、新規事業を創出し、常に新しい価値を世の中に提供し続ける企業しか生き残れないはずです。「Astrategy」と「Anews」を活用していただき、日本企業の新規事業の創出をサポートしていきたいです。そのためにはまず客観的にマーケットを分析していく必要があります。新規事業に着手する際には「Astrategy」で外部環境をリサーチし、「Anews」で社内コミュニケーションを図ることで、全社でイノベーションを生み出すカルチャーが醸成されます。さらに、この2つのサービスの導入は「AI活用の第一歩」だと思います。――それが当たり前という世界に持っていきたいですね。


取材後記

ストックマークのメンバーの多くが大企業経験者であり、学生時代からアルゴリズムを研究していたようなハイブリッド人材であることが強みだと語っていた林氏。新規事業にも長け、AI領域において最先端を走ってきた優秀な人材が揃う組織だからこそ、1000社を超える企業に導入されるサービスを生み出すことができている。林氏が語ってくれたように「Anews」や「Astrategy」は、新規事業を着実に加速させるサービスだ。新規事業をスピーディーに生み出していきたいと考えている担当者は、導入を検討してみてはいかがだろうか。



ストックマークのイノベーション支援の詳細「Anews」はこちらからhttps://eiicon.net/tools/9

(構成:眞田幸剛、取材・文:阿部仁美、撮影:古林洋平)