「オープンイノベーターズバトン」をやるワケ

オープンイノベーションの有用性が叫ばれて久しく、ここ数年オープンイノベーションというワードを見る回数も増えてきました。ただこの「オープンイノベーションブーム」は、諸刃の剣だと感じており、正しく手順を踏んで実践する必要があります。

一方で、ノウハウや知見が業界に溜まりつつあるのも事実です。今回このバトンは、オープンイノベーション界隈に身を置き、事例を何百・何千と見てきている業界人たちの知恵を世の中に完全オープンにしてしまおうという試みです。

これからオープンイノベーションという”新大陸”への航海に乗り出そうとしている企業に対し「ここは気を付けよう」という攻略本のようなノウハウを展開したいと考えています。


eiicon company 代表/founder 中村亜由子

東京学芸大学を卒業し、株式会社インテリジェンス(現 パーソルキャリア株式会社) に入社。入社後は、最速で営業マネージャーに昇進、約1000名の転職をサポート、MVP他社内表彰受賞歴多数。2015年育休中にeiiconを単独起案。2016年4月に育休から復職後、予算取りに駆け回り7月から本格的に立ち上げを開始。 地の利に関係なく地方含めた日本企業のオープンイノベーション実践をアシストするオープンイノベーションのための企業検索プラットフォームeiicon(エイコン)を担う。

 

企業がオープンイノベーションを実践すべき理由は「企業価値の向上」に他ならない。

企業価値とは、企業そのものの魅力を算出した「企業の価格」です。経産省の資料では以下のように述べられています。


「企業価値」とは企業が利益を生み出す力に基づき決まる。

企業が利益を生み出す力は、経営者の能力のみならず、従業員などの人的資本の質や企業へのコミットメント、取引先企業や債権者との良好な関係、顧客の信頼、地域社会との関係などが左右する。

※経済産業省 経済産業政策局産業組織課 『企業価値研究会 論点公開~公正な企業社会のルール形成に向けた提案~』より


即ち会社全体の「経済的価値」である企業価値(企業の価格)を向上させるというのは、企業の利益を生み出す力を向上させる、と言い換えられます。既存の事業拡大はもちろんのこと、新たな事業の柱を創り収益を得る。また、将来にわたっておそらく得られるであろう収益の源を創ることなども、この「企業価値を向上」させる行為にあたるといえます。


オープンイノベーションとは「企業内部と外部のアイデア・技術を意図的に組み合わせることで革新的で新しい価値を創り出すこと」であり、2003年(米)ヘンリーWチェスブロウが提唱したイノベーションの方法論ですが、今、グローバルでオープンイノベーションが実践されてきているのは、「企業価値の向上」に直結しやすい手法だからだともいえます。


オープンイノベーションが見せる幻想

ここ数年オープンイノベーションは過熱してきており、だいたいそのワードの意味は皆さん知っているまでになりました。ただ、怖いのは『オープンイノベーション』がマジックワード化することです。私自身、eiiconというオープンイノベーションプラットフォームを展開していながら、いつもこのワードにむずがゆさを感じます。

たとえば、中期経営計画において、必ず出てくる新領域の事業創出と売上計画ですが、ここに一言「オープンイノベーションで実践する」と書いてあるものを、この数年、毎年目にします。恐怖です。

「オープンイノベーションで実践する」。これは非常に乱暴、かつ、危険な言い回しです。

オープンイノベーションはただのイノベーションの方法論であり、まったくスーパーな呪文でも魔法でもなく、新規事業を推進する上での手法の一つです。

会社の行く末を見据え、企業の成長戦略から各事業部に戦略が落ち、その過程で新規事業が戦略的に考えられていく。そこで、オープンイノベーションという手法を「目的」を明確にして取り入れる。

それは、「外部にパートナーを求めた方が事業推進する上で筋がいいもの」(社内でゼロから開発する上でのコストや時間軸、市場)を明確にすることでもあります。

また、逆に、すべてをオープンイノベーションでやる必要もありません。

クローズドイノベーションや社内の新規事業でできるなら、それは社内でやると決めるのも必要です。

オープンイノベーションという手法を取り入れる際には、「飛び地のキラキラした事業シーズ」をまず探しに行くという見切り発車のやり方ではなく、この、『対外的にリソースを求める目的・ターゲットの絞り込み』がステップとしては絶対に欠かせないと考えています。

前提となる「外部と連携する目的・期待成果」がないと、外部パートナー候補と会う際に「連携によって期待する成果」を明確化することはほぼ不可能であり、「お互いに共有できる目的や、期待成果」がないままの会議は両者にとってストレスフルな場となります。

もう私の講演を聞いた方やコラムを読んでいただいた方には耳タコ話で恐縮ですが、初回はオープンイノベーションを実践する理由と、最初の関門とその突破方法「目的を明確にせよ」でした。


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第二回は、私の尊敬するオープンイノベーター、サムライインキュベート・長野英章さんにバトンをお渡ししたいと思います。